和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 12
2002-08-12 発行

幼児期の自己制御機能の発達(5) : 親子関係が家庭と園での子どもの行動パターンにおよぼす影響

A developmental study of self-regulation in preschool children (5) : Influences of parent-child relations on the children's behavior pattern
森下 正康
フルテキストファイル
DOI[info:doi/]
本文言語
日本語
開始ページ
47
終了ページ
62
記事種別(和)
一般研究
キーワード(和)
自己制御
自己抑制
自己主張
養護性
攻撃性
親子関係
幼児期
抄録(和)
本研究の目的は,(1)子どもの自己抑制や自己主張の特徴が家庭と園で一致するかどうかについて発達的に検討すること,(2)さらに母親や父親との関係が安定した自己制御機能の発達や養護性・攻撃性の形成にどのような影響を与えるかを明らかにすることであった。和歌山県下の5つの幼稚園と保育園の3,4,5歳児を対象に,その子どもの母親と父親,担任教師に評定を求めた。母親と父親に対しては家庭での子どもの特徴(自己抑制,自己主張,養護性,攻撃性)と親子関係の特徴(受容,統制,矛盾,実権)について,担任教師に対しては園での子どもの特徴について評定をもとめた。すべてのデータがそろったのは489組であった。主な結果は次の通りであった。(1)家庭と園における子どもの自己抑制や自己主張の特徴は全体としてあまり一致していなかった。年中児は家庭での自己抑制の強さがそのまま園でも出現しやすいのに対して,年長児はそのような傾向は少なかった。自己主張については男子は年長になるほど家庭と園での特徴は一致する傾向があり,特に家庭で自己主張の高い年長児は園でも自己主張の高い者が多かった。それとは対照的に女子は年長になるほど一致しなかった。(2)受容的で矛盾が少なく統制がゆるやかな両親との関係のなかで安定した自己抑制が形成されるのに対して,拒否的な両親や矛盾の多い統制的な母親のもとでは自己抑制が形成されない。(3)矛盾の少ない一貫した母親の態度が男子の安定した自己主張を育てるのに対して,矛盾の多い母親や拒否的な父親との関係がその形成を阻害する。女子には有意差がなかった。(4)家庭と園での安定した養護性の形成には,男子では矛盾の少ない母親の態度が,女子では受容的な両親との関係が関与していた。また拒否的統制的で矛盾の多い両親との関係が場面を越えた高い攻撃性を形成するのに対して,受容的で統制のゆるやかな矛盾の少ない両親との良好な関係が攻撃性の形成を緩和すると考えられる。(5)子どもが家庭と園という場面によって異なる特徴を示す場合,母親父親のいずれかとの関係や園での先生との関係を反映している可能性がある。
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