2022年,紀州東照宮の例祭である和歌祭は四百年式年大祭を迎えた。しかし,全国各地に数百とある東照宮のなかで江戸時代に渡御行列を有した大規模な祭礼は8祭礼(日光,尾張,紀伊,水戸,岡山,広島,鳥取,仙台)しかなく,現存しているものはさらに少ない。また,紀伊を除く多くの祭礼はすでに四百年を記念する大祭を2016年に終えている。ここでは,なぜ紀伊だけが2022年に四百年式年大祭を行なうのかを和歌祭の歴史を中心に確認し,近世から現代にいたる経済的基盤の変化に注目した上で,運営資金をもたない和歌祭がなぜ継承されてきたのかを明らかにした。