小論では、高校の「英語表現Ⅰ」用教科書11冊における設問の題材内容を分析することによって、批判的思考力に関する設問の割合、特に社会問題を題材とした設問の割合、および内容的な特徴を考察した。その結果、設問の81%を文法・語法などの言語形式に関する設問が占めており、批判的思考力を育成する設問は15%、そのうち社会問題を題材とした設問は5%に過ぎないことが明らかになった。選挙権と成人年齢が18歳に引き下げられる今日、高校生を「自らの歴史をつくる主体」(ユネスコ学習権宣言)とするためには、英語教育においても社会の諸問題に対する批判的思考力の育成、そのための教材と指導法の再検討が急務である。