1980年代バブル経済による中心市街地の地価高騰に対応して,多くの大学キャンパスが郊外丘陵・山地に移転した.新キャンパスは切り盛り地形改変を伴う土地造成により建設された.誘発された周辺宅地開発とあわせ,従前の地域生態系を劣化させた.その後の景気低迷により開発圧が低下する中,郊外キャンパスは里山管理の担い手供給源としての価値も認められる.本報告では,和歌山市郊外の和泉山脈山麓に立地する和歌山大学栄谷キャンパスにおいて,和歌山大学システム工学部学生を主な対象に,キャンパスの立地環境を活用した防災・生態系実習の取り組み内容と経緯を紹介する.GISを活用した新旧地形図比較による土地造成の定量化,UAV(ドローン)を用いた地形変化量の計測,植生調査による環境負荷の計量を通じ,地域生態系を防災・環境の観点から評価するものである.これらの実習成果を時系列で蓄積していくことで,地域生態系モニタリング研究の一助ともなることが期待される.