本論では,米澤(1994),米澤(1995b)を受けて,学習過程,問題解決過程における「現実感(reality)」の重要性を指摘し,そうした現実感を持つために必要な「視点」の設定の効果について考察した。その際,問題解決者が問題解決過程において自覚する現実感としての迫真性と,それに基づく「自分にとっての問題理解」という視点が問題解決にとって重要なカギとなる。状況依存的思考をする人間にとって,問題を理解する最も適切な視点を設定し,そこから問題状況を理解・構築することが,迫真性の喚起につながり,学習が進むと考えられる。本論では,そうした具体例を挙げ,考察した。更に,いわゆる正解が一義的に決定されないパラドックス問題を解く場合の視点の効果について探求した。また,意欲を育てることについても言及し,単に視点に立つのではなく,どの視点から理解しているのかという視点そのものの理解と迫真性の中身の理解の重要性を指摘した。