本研究は、高校保健体育教師が有する信念の違いが体育授業中の教師行動にどのような影響を与えているのかについて検討することを目的とした。この目的を達成するために次の2点について検討した。すなわち、高校保健体育教師の有する信念をアンケート調査から検討するとともに、その結果に基づいて信念の異なる3名の教師を抽出し、教師行動の違いを「教師行動観察法」により比較検討した。その結果、高校保健体育教師の信念は、「社会人基礎力育成」を中核に据えて、多様な社会の中で活躍し続けられる主体形成やスポーツライフの形成を強く意識していたことが認められた。信念の異なる3名の教師の教師行動の違いから、信念が異なれば得ようとする知識が異なり、それが授業中の教師行動の違いとなって現れ、結果的に態度得点の違いをもたらしたものと考えられた。さらに、高校体育教師の役割の二重性から、自身が専門とする運動・スポーツ種目以外についての教材研究の重要性が示唆された。