中学校から特別支援学校への校種間の異動を経験したG教諭の性教育への苦手意識がいかなる経験から生まれ、こうした価値観を形成してきたプロセスを検討した。その結果、性教育が行動変容に直結しないことや、子どもたちの内面にどのように影響したのかが見えないため、評価の方法に難しさと不安を感じ、苦手意識に繋がっていることが分かった。さらに G 教諭の語りを「実践者」の意識と比較すると、G 教諭は狭義の性教育から脱しておらず、また、生徒が表出したニーズに対してのみ指導を行おうとする点で違いが見られた。一方、G 教諭は女性教師が男子生徒へ語る性教育の実際に触れたことをきっかけに、性の話は男性間の秘め事という意識が変化し、性を「語ってもよい」という感覚へと変容した。今後は「授業の評価までを明確にした実践例の蓄積」「教師が抱える困難感へのインフォーマルな関係における支援」の実現に向けた取り組みが必要と考えられた。