世界的潮流である包括的性教育を推し進めるためには、旧来からの教師の意識を改革する必要がある。その端緒として研究Ⅰでは、包括的性教育に取り組んでいる教師6名を対象に、包括的性教育を意識するに至った過程を明らかにするためインタビューを行い、発言内容を質的に分析した。その結果、狭義の性教育のイメージから脱却し広く捉え直していたことが明らかとなった。そこから教員研修の要点として「理論的根拠の提示」「知的障害女性の複合差別の周知」「性教育カリキュラムを提案し共通理解を求める」の3点が導かれた。研究Ⅱでは、教員研修プログラムを作成し、その効果を検証した。アンケート記述から、初めて研修を受けた教師には性教育の必要性の理解を促す効果が顕著であったが、苦手意識が軽減されたのは27人中4人に留まった。今後の研修では「実態に応じた複数の指導形態の周知」「校内の人的資源を活用できることの周知」が必要であると考えられた。