著者らは、和歌山県内に協力校を得て、Instructional Rounds(以下、IR と略す)のシステムを用いて学校間で連携した授業研究を行うことで小規模校化する地域で、学校が専門的な学習共同体として維持できるためのシステムづくりについて研究を行ってきた。本稿ではその研究のもう一つの目的である、調査協力者の教職大学院の現職院生が、IR を用いた授業研究の試行実施に関わることで得られる学びの質について明らかにすることを目的とした。有田川町の調査協力者との差異に注目して調査結果を分析し考察した結果、院生は授業者としての視点にとどまらず、学校全体を意識した視点をもって授業分析し、現任校の授業研究や学校の研究に課題意識をもち、従来実施している授業研究の手法や校内研修についての省察や見直しを行っていることが明らかとなった。