幼稚園での子どもの自己制御(自己抑制と自己主張)の特徴と,思いやりおよび攻撃性との関係について,さらに親子関係が自己制御機能の発達にどのような影響を与えるかについて検討した。そのために,幼稚園児(3:10-6:10)の母親316名とクラスの担任教師11名に対して,子どもについて評定を求めた。分析の結果,次のことが明らかとなった。(1)子どもの自己制御・思いやり・攻撃性尺度に関して,家庭での母親評定と園での担任評定との相関は全体に低かった。また担任と他の教師による評定間の一致度も高くはなかった。(2)担任評定による園での子どもの自己抑制は,男子では年中から年長にかけて,女子では年少・年中・年長と年齢の上昇と共に発達していた。自己主張の発達に関しては,男子では年齢による変化がないのに対して,女子では年少から年中にかけて上昇していた。(3)思いやりについて,年中児では,男子は自己抑制の高い群の方が得点が高いが,女子には有意差はなかった。年長児では,男女共に自己抑制と自己主張が共に高い群の得点が高かった。(4)攻撃性について,年中児では男子は自己抑制の低い群の方が,女子では自己主張の高い群の方が攻撃性が高かった。年長児では,男子の場合は自己主張が高くて自己抑制の低い群の攻撃性が高く,女子の場合は自己抑制の低い群の攻撃性が高かった。(5)親子関係の特徴と園での子どもの自己制御との関連から,年中児の場合,母親の受容的態度が男子の自己主張を育て,母親の誘導スタイルが女子の自己抑制と自己主張の両方を育てる可能性がある。それに対して,年長兄の場合,母親の統制的態度や力中心スタイルが男子の自己抑制機能の発達を阻害する。また,女子に対しては,母親の力中心スタイルが自己主張機能を高め,さらに,母親の統制的態度が自己主張だけが高く自己抑制の低い子どもを育てる可能性がある。以上の結果は,先の親子関係と家庭での子どもの特徴との関連とは異なっていた。