本論では,米澤(1994)を受けて,学習過程,問題解決過程における「理解」の重要性を指摘することを目的とした。その際,問題解決者が理解の重要性を自覚すること,そして,問題解決者にとっての理解の意味を,学習指導者たる教師が単に枠組み的知識としてではなく,真に認識することの必要性を指摘した。まず,いくつかの具体的な問題解決場面を取り上げ,認知心理学実験の知見をもとに,学習者にとっての理解の意味を問い直す指摘をした。更に,筆者自身の大学における論文理解の授業からの報告も含めて,真の理解のために必要な指導観を指摘し,学習者の視点に立つことの意味を再吟味した。こうした具体的な指摘と考察を通じて,学習者と教材との「かかわり」を規定し,その後の問題解決そのものに多大な影響を与える理解過程の分析を行い,学習者が理解時に,その理解状況と意味,及び自らの理解の視点に「気づく」ことの重要性を指摘した。