学習指導要領に示された体育科教育の「内容」のうち,「体育に関する知識」(中学),「体育理論」(高校)はもっとも授業実践が低調な領域である。その原因は学習指導要領がこの領域をスポーツ文化を総合的に教えるものとして位置付けてはおらず,主に,自然科学分野に傾斜した実用主義的知識で構成しているところにある。学校における体育科教育はスポーツ文化の継承・創造の担い手にふさわしい基礎的能力を育てるところである。本稿ではこの観点から,スポーツ文化に関する理論的学習の必要性と意義を述べ,これを「教室でやる体育の授業」として展開することを提案した。そして具体的実践プランのひとつとして,スポーツ文化の基礎的概念を教える「ボールの授業」の授業実践モデルを提示し,その追試実践を総括した。