和歌山大学教育学部紀要. 教育科学 56
2006-02-28 発行

幼児期の親子関係と向社会的行動・攻撃行動のモデリング(2) : 父母の態度パターンによる分析

Influences of Parent-child Relatins on Modeling of Prosocial Behavior & Aggressive Behavior in Young Children-2 : Analysis by Parental Attitude Pattern
森下 正康
フルテキストファイル
Self DOI [info:doi/]
本文言語
日本語
開始ページ
33
終了ページ
41
キーワード(和)
親子関係
養育態度
モデリング
向社会的行動
攻撃的行動
幼児
抄録(和)
本研究の目的は、幼児について、父母のどのような態度パターンにおいてどのようなモデリングが生じているかを明らかにすることであった。そのために、次のような仮説を立てた。仮説1.受容的な態度や統制のゆるやかな態度を示す親に対して、向社会的行動のモデリングが生じるだろう。仮説2.その反対に、拒否的な態度や統制的な態度を示す親に対しては、攻撃行動のモデリングが生じるだろう。仮説3.リーダーシップを持つ親に対して、向社会的行動や攻撃行動のモデリングが生じるだろう。これらの仮説を検証するために、3,4,5歳児の父親と母親に対して、子どもおよび自分自身について向社会性と攻撃性に関する評定と養育態度に関する評定を求めた。また、幼稚園の担任教師に対して子どもの向社会性と攻撃行動に関する評定を求めた。すべてのデータがそろった244組について分析した。モデリングの指標としての親子間の相関(類似性)と父母の態度パターンとの関連を検討したところ、子どもについて父親母親の評定に共通する次のような結果が得られた。(1)男児について、父親が統制的で母親が統制のゆるやかなパターンの場合、男児の向社会性得点と母親の向社会性得点との間に有意な正の相関があった。また、父母のリーダーシップが共に高い場合、男児の向社会性の特徴は母親の向社会性の特徴と類似していた。(2)女児について、父母共に受容的な場合、女児の向社会性の特徴は父親の高い向社会性の特徴と類似していた。(3)父母共に統制的な場合、男児の攻撃性の特徴は母親の攻撃性の特徴と類似し、全般に高い攻撃性を示していた。また、父親の方がリーダーシップをもつ場合、男児の攻撃性の特徴は母親の攻撃性の特徴と類似していた。以上、部分的に仮説1. 2が支持されたが、仮説3は反対の結果もあった。また、向社会性にしても攻撃性にしても男児は母親を向社会性および攻撃性のモデリング対象としているのに対して、女児は父親を向社会性のモデリング対象としている可能性があるということが示唆された。
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