造形遊びの魅力は,子どもたちが材料や用具,場所や環境,友達とかかわりながら,子どもたち自身が意味や価値を見出し,学習活動をつくりだしていくところにある。
本稿では,子どもたちのエネルギーを受け止め,表現へと導く素材である,「木」を基にした造形遊びを展開した。多様な学びがひろがるよう,香りや質感扱いやすさといった観点を持って,多くの木切れ,木片,木の皮などを集め,教室の一角に平積みし,学習時間以外にも手に取れる「木の空間」をつくりあげた。そのことによって和みや癒しの効果が生まれ,表現意欲が喚起され,十分な活動時間を保障することができた。そして,互いのまなざしを共有する場面として設定した,テーマを持った造形表現では,子どもたちは一体感を持ちながらも,個々の木とのかかわりや思いを活かし,自分らしい表現をつくりだす対話を繰り返して学びをひろげていった。子どもがもてる力を総合的に働かせ,新しい意味や価値が見出されるような魅力ある題材設定が重要であるとともに,指導と評価の一層の充実が課題である。