本研究の目的は、特別支援学校(病弱)高等部での芸術科(美術)における遠隔授業の実践過程及びその成果について、事例検討を通して明らかにすることである。事例となる生徒の高等部約 3 年間の遠隔授業について、観察記録や、生徒へのアンケート、生徒の作品、授業者による省察をもとに時系列に整理された。その結果、対象事例にとっての遠隔授業の成果として、(1)身体的負担が少ない、(2)身体動作の制約があっても実技を伴う美術教育は ICTを活用して実施可能である、(3)作品の質の向上、制作の幅の広がり、が挙げられた。このような遠隔授業は、コロナ禍を背景の一つとして実施されたものの、それにかかわらず今後も、教育方法の選択肢の一つとして、教育内容、生徒各々の障害・病気の状況や、それに伴う身体的制約の変化、生徒の希望やニーズ、予想される教育成果を総合的に考慮した上で実施されていく必要がある。