少年法改正に至る大きな要因となった,非行少年の凶悪化現象について,少年による凶悪事件の統計的動向と少年事件の臨床例をもとに検討し,非行少年の攻撃行動の根源にある「攻撃性」が質的に変容していることを指摘した。攻撃性の発動は,危害行動としての非行やいじめなどの問題行動につながりやすいため,否定的に評価され抑制されるべきものとみなされやすい。しかし,攻撃性には,子どもの成長に伴う積極性や主体性,さらには,共同体社会で生きるための依存性といった重要な心的エネルギーが等値しているのである。このような攻撃性の質的変容は,非行少年に限らず,現代の子どもの荒れや青少年の幼稚化現象にも通低している。以上の観点から,子どもの各発達段階における攻撃性の発動について,その肯定的意味に着目しながら,子どもの攻撃性をより健全な方向に伸ばすための,家庭,学校,地域社会のあり方について考察した。