新学習指導要領の実施に伴い,盛んに指摘される学力低下論の本質的な問題点を浮き彫りにする。米澤(2001b)の議論を受けて,学力低下論者の学習過程への無理解,短絡的な反復学習支持や学習量への信仰的支持の問題点を実証的データを基に分析する。また,日常生活に役に立たない「閉じた学習」の弊害について,非科学的信念を克服できなかった今までの科学教育の失敗を調査データを基に分析する。そして学力低下は今日的な新しい課題ではなく,学力低下論者の学習観こそ,今までの学習の負の成果であることを指摘する。更に,学力とは活かせることであるとの観点から,生きる力につながる学力を育てる教育実践について報告する。