本論は,中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」に対して,認知心理学の立場から,分析検討を加えたものである。答申がいわゆる教科の論理の立場からではなく,こどもの側に立ってこどもにどんな力をつけていくのかという観点から論じられている点は評価される。しかし,そこで提言されている「生きる力」の本質は何なのか,そしてその「生きる力」を身につけるためには,こどもに何が必要で,そのために教育環境をどのように構築すべきなのかについて,建設的な提案がなされているとは言えない。そこで本論では,「生きる力」の本質を「認知力」として捉え,そのために学習者のメタ認知,真の自己評価力の育成が不可欠であることを提唱した。