当小論は、現代ドイツの教育学者W・フリットナーの唯一のミューズ教育論文について,西欧の美的教育思想史におけるその歴史的位置づけと,その理論的特質の解明とを意図して調査考察したものである。後者の仕事の方法としては,彼の教育学思想全体との関連付けと,同時代のミューズ教育論との比較とを採った。その結果,フリットナーのミューズ教育論の特質は,「ミューズ的」が「美的-倫理的」の意味にあること,またその歴史的源泉はシラーの美的教育論にあることを論証しえた。加えて,近代ドイツに特有なミューズ教育の,我が国における今日的意義の一端を知ることができた。