現代日本の学校教育において,学力問題は大きな論争点のひとっである。それには,学力の概念規定から内容,方法,運動にいたる広範な課題が含まれるが,小論は,学力形成の重要性を「読書算=学力の基礎」のシェマで提唱している岸本裕史氏の学力論と運動の検討を課題としている。氏の学力論に関する著作は膨大な量にのぼり,父母や教師に与える影響もおおきい。岸本氏の「学力」論を,1)社会歴史的視野から2)学力論の論理構造そのものと3)教育運勅諭的側面から分析検討して,その理論と方法が一定の有効性をもちつつも,学校社会の学力競争を激化させる危険性を指摘した。そして,その弱点を克服するための今後の課題を明らかにした。