今日,「部落問題が提起する教育課題」の解決が進み,同和教育の独自的課題を特定できない状況が,和歌山県の多くの地域で生まれてきている。本稿は,こうした事態の中でどのような同和教育が展開されているのか明らかにすることを目的にした。その際,和歌山県の同和校(校区に同和地区をふくむ学校)の1991年度方針を対象に,「現状認識」「教育認識」「学校認識」の三つの側面から検討するという方法をとった。この三つの側面のうち,教育実践に直接関連する「教育認識」を検討の中心においた。その結果,小学校と中学校ではやや異なるが,(1)同和教育実践の柱がほぼ四点に整理できること,(2)今後の実践の展開にとって,「人間認識」「人権認識」たる概念で説明されている内容や,この二つの概念と「部落問題認識」の形成との関連について,いくつかの検討すべき課題があることを示した。