当小論は,1949年に開催されたミューズ教育大会において発表された諸思想を題材にして,60年代に20年代に遡ってそのイデオロギー性が厳しく批判されたミューズ教育思想が何故に戦後早期に再び主張されその後約10年間支配的影響を与えたのか,またナチズム時代を経験した戦後早期のミューズ教育思想の特質は何かという問題の解明を主要な意図にして,調査考察したものである。その結果,戦後早期でのミューズ教育思想の再来は連合軍の教育政策と関連していること,その特質は「イデオロギーに対するミューズ教育思想の抵抗力の無さ」を自覚した冷静な批判的態度にあることを論証しえた。