一般的な剣道授業では技能学習が中心で、駆け引きを伴う攻防を十分に行うことができていなかった。攻防を行っても、ただ闇雲に竹刀を振り回しているだけになってしまい、それらを改善するためには対人的状況下での戦術的気づき(打突機会の判断)と運動技能の発揮(打突)を結びつける必要があり、近年では剣道授業における戦術学習の重要性が示されている。先行研究では、攻撃に関する戦術的課題に焦点を当てたものはあるが、防御側の戦術的課題に焦点を当てているものは見当たらない。「受け」の技能を向上させることは応じ技にもつながるため、攻撃と防御が同時に起こりうる剣道では欠かすことができない。そこで本研究では、中学生を対象に攻撃と防御の両方に課題を設定した剣道授業を計画し、その有効性を検証した。その結果、「打突の機会」の理解、攻防技能や思考判断の高まりが見られ、授業の限られた時間のなかで生徒が戦術を理解して活用できるようになり、攻防の駆け引きを行えるようにするには有効であることが示唆された。